農薬とは、作物に害を与える菌、線虫、ダニ、昆虫、ねずみとその他の動植物又はウイルスの防除に使う殺菌剤、殺虫剤、または植物成長調整剤、発芽抑制剤等の薬剤のことをいいます。作物の病害虫を予防するための「天敵」も、農薬に含まれます。農業の効率化や品質への損害を抑制する目的で、世界中(特にアジアと中南米諸国)で用いられてきました。1800年代には商品として近代的な農薬が使われ始め、1930年代にはDDTやBHCなどの化学合成農薬が多いに発展しました。1950年代から、農薬の売上は劇的に増加し、日本や開発途上国の農業が近代化されてきました。
〈農薬の分類〉
農薬は用途別に分類されており、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、殺そ剤(ネズミの害を防ぐ)、植物成長調整剤、誘引剤、天敵、微生物剤(微生物を使って防除する)等となっています。
〈農薬の利点と欠点〉
- 利点
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- 生産性の向上:効率的・省力的な管理ができ、広く大きく栽培管理ができる。
- 収益性の向上:1経営者当たりの売上げが増加し、人件費が削減される。
- 優位販売:虫食いがなく、形が整う。「見た目」重視の市場で優位性がある。
- 欠点
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- 環境への負荷:生物層を破壊する。農薬耐性害虫・菌を助長する。
- 人体への影響:残留農薬、農薬暴露。
- コスト高:耐性害虫・菌の存在により、農薬の使用量が年々増加してコストがかかる。
残留物試験や不必要な化学薬品を処分するコストがかかる。
農薬は、「生物を殺す」目的でつくられたものです。人や家畜の生命、環境に、悪影響を及ぼす恐れがあります。その毒性が人畜・環境に被害を与えないよう、農薬取締法や食品衛生法の規制を受けているのです。農薬の登録の際には、品質(薬効)と合わせて、毒性試験、残留試験、環境への影響試験が実施され、その結果が登録可能なものかどうかの判断材料となります。
〈残留農薬〉
農薬は散布されて作用を発揮した後、すぐに無くなるものではありません。作物に付着したままであったり、土壌や大気、河川等に流れ出たりします。その結果、環境が汚染され、多種多様な生物が生存する生態系は破壊されてしまいます。また、農薬が付着した作物や、その作物をエサとして育った家畜の肉やミルクを通して、農薬が人の口に入り、健康を害することが考えられます。このように、作物等に残った農薬は「残留農薬」と呼ばれ、作物や農薬成分ごとに摂取しても健康に害のない値(残留基準)が決められています。農薬の使用方法を守って使われている場合はこの残留基準を超えることはまずありませんが、もし何らかの理由で使用方法が守られなかった時、安全の保証は出来かねるのではないのでしょうか。